給湯器の設計標準使用期間って何?

給湯器には設計標準使用期間というものが定められています。

あまり耳馴染みのない言葉ではありますが、ガス・石油給湯器にはこの設計標準使用期間が設定されており、しばしば点検や交換のタイミングとして引き合いに出されます。

しかし設計標準使用期間がどのようなものなのかということをご存知ない方もいらっしゃるかと思いますので、今回は設計標準使用期間についてご紹介いたします。

目次

設計標準使用期間とは

設計標準使用期間とは「標準的な使用をした場合、経年劣化によっての安全上のリスクが著しく低い状態で使用できる期間」のことを示したものであり、給湯器の場合は製造日を起点として家庭用は10年、業務用は3年と定められています。

あくまでも「安全上のリスクが低い状態で使える」という目安期間ですので、この期間を超えて使用したからと言って給湯器が使えなくなるというわけではありませんし、「標準的な使用」は日本産業規格(JIS)に基づいてメーカーが算出したものになるので、標準的な使用でない場合や製品の個体差によって必ずしも10年間安全に使えるというわけではありません。

実際には各ご家庭の使用状況や使用環境によって変わるものなので、10年というのは目安でしかありませんが、設計自体が標準的な使用であれば10年程度は使えるように作られており、多くのケースで給湯器の寿命が統計上10年前後で訪れていることから、ある程度参考になる期間でもあります。

なぜ設計標準使用期間が定められているのか?

設計標準使用期間がなぜ定められているのかは「消費生活用製品安全法」という法律の「長期使用製品安全点検制度」と密接に関係しています。

「経年劣化によって火災や死亡事故などの重大事故に繋がる発生率が高い製品」に対して「特定保守製品」と指定し、その製品に対し「法定点検」の義務化によって事故を防止するという目的で運用開始されたものが長期使用製品安全点検制度です。

長期使用製品安全点検制度は上記したように法定点検によって重大事故を防ぐことを目的としており、法定点検を行うタイミングとして設計標準使用期間が設定されています。

重大事故に繋がる発生率が高い「特定保守製品」は

  • 屋内式ガス瞬間湯沸器(都市ガス)
  • 屋内式ガス瞬間湯沸器(LPガス)
  • 屋内式ガスふろがま(都市ガス)
  • 屋内式ガスふろがま(LPガス)
  • FF式石油温風暖房機
  • ビルトイン電気食器洗機
  • 浴室用電気乾燥機
  • 石油給湯器
  • 石油ふろがま

の9製品が対象とされていましたが、令和3年8月1日に改正され、石油給湯器と石油ふろがまの2種に該当する製品のみが対象に変更となっています。

本来であれば石油給湯器と石油ふろがま以外の製品は法的に設計標準使用期間剃る必要はありませんが、メーカーはそれ以外の製品に関しても設計標準使用期間を定め、経年劣化を由来とした事故を防ぐため、法定点検と同じ内容の任意点検を行っており、設計標準使用期間を超えた製品に関しては任意点検や交換の推奨を行っています。

設計標準使用期間を超えて使うことのメリット・デメリット

設計標準使用期間は、その期間を過ぎたからと言って給湯器が使えなくなるという類のものではありませんので、設計標準使用期間を過ぎても給湯器を使い続けることができます。

その際のメリットとデメリットを紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

設計標準使用期間を超えて使用するメリット

設計標準使用期間を超えて使用することのメリットは「給湯器本体の費用を節約できる」という点です。

給湯器を新しいものに交換する場合は、給湯器本体の価格が交換時に必要になるので、ある程度まとまったお金が必要になります。

その点、設計標準使用期間を過ぎて給湯器自体を交換しない場合は、必要に応じて点検や修理を行うことで給湯器を使い続けることができるので、一度にまとまったお金が出ていくことがなく、経済的にメリットがあると言えます。

設計標準使用期間を超えて使用するデメリット

修理コスト

設計標準期間を超えて給湯器を使用する場合のデメリットとしてまず挙げられるのが「修理に関するコストがかかる」という点です。

経年劣化はもちろん、給湯器を使用した際の自然損耗によって、長年給湯器を使っていれば不具合や故障を避けることはできません。

不具合や故障などの症状が現れた際は当然修理を行う必要がありますが、長年の使用によって経年劣化や自然損耗が進んでいる場合は、複数箇所修理が必要で修理費用がかさむ場合や、修理が完了した後に別の箇所が故障して複数回出張費や交通費が必要になる場合があります。

経年劣化や自然損耗が進行しているので修理自体にコストがかかることは仕方の無いことですが、状況によっては新品に取り替える以上にコストがかかることがあるので注意が必要です。

点検コスト

修理のコストの他にも「点検のコストがかかる」というデメリットも挙げられます。

給湯器を安全に、安心して使っていくためにはメーカー点検などによって、給湯器の状態を確認して使っていく必要がありますが、点検自体が有料のものになりますので、点検した回数分だけコストがかかります。

もちろん点検を受けて部品の交換などが必要になった場合は修理が必要になるのですが、その後修理が必要になった場合には「点検+修理」という形で費用がかかります。

中には、修理用の部品が製造終了したなどの理由によって、給湯器を交換せざるを得ない状況だった場合は「点検+交換」で、ただ交換するよりも点検費用分だけ余計にかかることもありますので注意が必要です。

給湯コスト

給湯器の経年劣化や自然損耗が進んでいる場合「新しい給湯器に比べ給湯コストが高くなる」というデメリットもあります。

給湯器内部の部品が経年劣化や自然損耗を起こすことによって給湯器の燃焼効率が落ちるため、お湯を作り出すのに余分にエネルギーを使用しなければなりません。

余計にエネルギーを使うことによって余計にエネルギー代がかかるので、石油給湯器なら灯油代、ガス給湯器ならガス代のコストが上がります。

給湯器本体というイニシャルコストを削減できる代わりに、お湯を使う際のランニングコストが上がっていく可能性がある点に注意です。

同じ価格帯の商品だったとしても、メーカー努力や技術の進歩によって給湯能力が上がっていますので、新しい製品に交換したほうが結果的に金銭的に得する場合があります。

事故リスク

給湯器内部の部品が経年劣化や自然損耗していることによって事故リスクが高まります。

給湯器の不具合に気づき、その都度適切に修理などの対処を行っていれば問題はありませんが、不具合に気づかず使い続けていると思わぬ事故に発展する場合があります。

石油給湯器やガス給湯器は一酸化炭素中毒や火災、爆発といった事故に繋がる可能性もありますので、給湯器使用時の異音や異臭など「おかしいな」と思う点があったら速やかに使用を中止し、点検・修理・交換などを行いましょう。

まとめ

給湯器に設定されている設計標準使用期間は「標準的な使用をした場合、経年劣化によっての安全上のリスクが著しく低い状態で使用できる期間」を示しており、事実上の耐用年数を表しています。

石油給湯器と石油ふろがまに該当する製品のみ設計標準使用期間前後で法定点検を受ける義務があり、その他給湯製品に関しては法律での点検義務は設けられていませんが、点検の法定義務がない製品に関してもメーカーは設計標準使用期間を過ぎた製品に対して任意点検や交換の推奨を行っています。

給湯器の事故は、時に死亡事故など大きな事故に繋がる可能性があるため、設計標準使用期間を過ぎた製品に関しては任意点検を受けるか、思い切って交換をすることをオススメします。

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